判 例

1.

平成18年4月26日、私どもは、埼玉県を被告とした行政訴訟において、さいたま地裁で勝訴判決を勝ち取りました。本件は、埼玉県下の某私立専修学校に係る私立学校運営費補助金申請を巡って、同校を経営するT学校法人の関係者(発起人の一人で元理事)であり、埼玉県住民でもあるA氏が、同校が埼玉県知事に提出している上記補助金の申請書類のうち、専任教員調査書に記載されている教員の勤務状況が本当に「専任」の実体を伴うものか、延いては補助金交付・運用が適正になされているか等につき疑念を抱いたことが事の発端でした。

A氏は、その点を調査すべく、T学校法人に対し、そもそも同調査書では一体誰を専任教員として報告しているのか、その専任教員の氏名を開示するよう求めたのですが、T学校法人は、関係者のA氏にさえ、何故か頑ななまでにその開示に応じようとしませんでした。止むを得ず、A氏は、今度は埼玉県民の立場から、同調査書の提出・保有先である埼玉県知事に対し、埼玉県情報公開条例に基づく公文書開示請求として、そこに記載されている専任教員の氏名の開示を求めました。しかし、同知事は、それが不開示事由たる個人識別情報に当たるとして不開示の決定を出しました。

そこで、当事務所は、A氏の委任を受け、同知事の所属する埼玉県に対し、その不開示決定は違法であるとして、その取消しと当該専任教員氏名の開示を求めて、平成17年8月、さいたま地裁に行政訴訟を提起しました。私どもは、私立専修学校の専任教員氏名は、前記条例10条1号ただし書イの絶対的開示事由たる「慣行として公にされている情報」又は「慣行として公にされることが予定されている情報」に該当すると主張し、参考となる情報公開審査会の答申例や学校関係法規、文献等を数多く積極的に指摘していきました。

その結果、さいたま地裁は、私どもの主張を受け入れ、私立専修学校も教育機関としての高度の公共的・公益的性格を有しており、その運営等が適切になされているかどうかは公共の関心事であること、他方、その専任教員の氏名は一般に他人に知られたくないと望むのが相当と考えられる個人情報とは考えにくいこと、情報公開審査会の答申例において私立大学の専任教員氏名の開示を認めた事例があるが、私立専修学校のそれとの間で、プライバシー保護の度合いにおいて取扱いを異にしなければならないほどの実質的差異があるかは疑問であること等を総合考慮して、私立専修学校の専任教員氏名は「慣行として公にされることが予定されている情報」に該当すると判断し、私どもの請求を全面的に認めたのです。この判決については、判決翌日の毎日新聞埼玉県版(朝刊)に記事が掲載されました。

本件は、行政機関等に対する情報公開請求訴訟という中でも、私立専修学校の専任教員氏名の開示が問題になったという珍しい事案であり、しかも、住民側の請求が全面的に認められたという点で、更に意義のある事例と言えるでしょう。また、私どもが争点を最小限に絞り、主張の整理や資料の提出も初めから積極的に行ったこと等が功を奏し、提訴から僅か8か月程度で勝訴判決が得られたのであって、迅速性の面でも十分な結果を残すことができました。

当事務所は、これまでも、行政庁に対する申請書類の受理拒否処分取消訴訟や地方自治体に対する学校事故に基づく国家賠償請求訴訟等、行政訴訟の分野でも一定の成果を収めてきましたが(前者については、訴訟後程なく当該行政庁が申請書類を受理したことにより完全に目的を達成できたため、訴えの取下げにより終了。後者については、自治体に、当初の提示額に更に上乗せした賠償額の支払いを容認させたことにより、訴訟上で和解。)、今回は、判決による全面勝訴という更にはっきりした形で結果を残すことができ、大変満足しています。

2.

平成17年1月26日、「食中毒にPL法適用」との高裁判決が下りました。これは、平成14年12月14日の朝刊各紙でも大きく報道された東京地裁判決の控訴審判決です。3家族8人が割烹料亭で出されたイシガキダイの料理を食べたところ、シガテラ毒素が含まれていて神経麻痺や全身掻痒などの重い中毒症状を起こしたという事件で、この食中毒の被害者らが料亭を相手取って、総額約3,800万円の損害賠償請求訴訟を起こしたというものです。

この訴訟は、当事務所の弁護士らが被害者の原告訴訟代理人となって提起したものです。東京地方裁判所は原告勝訴の判決を下し、その後、料亭側が控訴したため、東京高等裁判所に係属されましたが、平成17年1月26日に判決が下されました。判決内容は、一審裁判所と同様に私どもの主張を全面的に受け入れたものであり、のみならず賠償額は増額認定(1317万7764円)されて、この判決は確定しました。

この訴訟の中で、私どもは、料理も加工された動産であるから、PL法(製造物責任法)にいう製造物にあたり、PL法が適用されると主張しました。したがって、料亭側が、本件イシガキダイ料理にシガテラ毒素が含まれていたことにつき、事故当時の世界最高水準の科学技術の知識を持ってしても認識できなかったこと(開発危険の抗弁の成立)を証明できない限り損害賠償の責任を免れないと主張しました。

東京地方裁判所(判例時報1805号14〜31頁)および東京高等裁判所はこの私どもの主張を全面的に認めた上で料亭側は上記開発危険の抗弁の成立を証明できなかったとして、原告勝訴の判決を下したものです。

この判決は、@料理の分野にも製造物責任法を適用した点や、A料亭(製造者)側に、入手可能な世界最高水準の科学技術の知識でも欠陥を認識できないこと(開発危険の抗弁の成立)を証明しなければ免責されないという、免責に高いハードルを課した点で画期的といえます。この判断が確立されたことによって、私どもとしても、より一層被害者救済の一助となることができました。

3.

平成15年2月26日の読売新聞等で、「民事での母子認定取り消し」の見出しで大きく報ぜられた新潟地裁(高田支部)の、いわゆる”平成女天一坊事件”の再審判決は、当事務所が国側(検察官)の再審請求手続に全面的に補助参加し、検察官及び地元弁護士と共同して立証を遂げた結果の勝訴判決であります。

取り消された「原判決」とは、東京の医師A女が、平成7年に死亡した直後に、それまでA女の妹と称していたB女が、A女の実子であると称して、同裁判所に対し、国(検察官)を被告として、母子関係存在確認の訴えを起こした事件に関する平成8年1月言渡しの母子確認判決のことです。

この原判決は、B女側はもとより、裁判所も検察官も一番重要な利害関係人であるA女の夫C男(医師)に対する通知を怠り、かつ、DNAの鑑定もしないまま、B女の兄、姉、叔母の3名の証言のみで、母子関係の認定を行ったものであり、裁判所の利害関係人通知義務化にもつながった意義深いものでした。

B女は、この原判決を利用し、直ちにC男に対して、A女の高額な遺産の遺留分7,000万円の請求訴訟を東京地裁に起こすなどし、以来高田と東京における7年にも及ぶ争訟のなかで、漸く、偽証とDNAの名大再鑑定が決め手となって、再審判決により母子関係が否定され、一件落着となったものです。

この過程では、母子確認訴訟時に偽証した叔母らを東京地検、警視庁に告訴し、A女の学友ら多数の参考人の証言や、DNAの帝京大学鑑定によって、叔母の偽証事実を明らかにし、再審開始に漕ぎつけたところです。(判例時報1835号 111〜113頁)